PCT出願とは、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願のことです。
出願の対象は、「特許」と「実用新案」です。
以下、説明していきます。
どのようなときにPCT出願を使いたくなるか
日本へ特許出願した発明の対象製品がヒットするかどうかが不明な場合があります。
ヒットした結果、外国へ特許を出願する必要が生じるかどうかがわかるまで数年を要する場合があります。
概算ですが、特許をアメリカで取得する場合の費用は、翻訳費用込みで1件100万円、中国および韓国の場合は1件90万円と言われています。
関連ページは「外国出願をするべき場合とは」です。
対象製品を販売等した後に特許出願をしたのでは、その発明は「知られた発明」となり、いわゆる「新規性」を失い、原則として特許を受けることができません。
ですので、日本への特許出願は急ぐ必要があります。
しかし外国出願の要否は日本への出願時点ではわからないことが多いと思います。
通常、外国へ出願をする場合にはいわゆる「優先権」を主張することで、日本で出願してから1年の猶予期間(仮に対象製品を販売等しても「新規性」を失ったとは扱われない期間)が得られます。
したがって通常、外国出願の要否はその猶予期間の間に判断します。
しかし、その猶予期間を経てもなお、外国へ特許を出願する必要があるかどうかが、わからない場合(発明の対象製品が、ヒットするまで時間がかかる場合等)があります。
このようなときは、日本で出願してから1年の間にPCT出願をすれば、日本で出願してから少なくとも2年6月(30月)まで外国出願の猶予期間が認められます(約150ヶ国への出願の可能性を残すことができます)。
なお、台湾はPCTに加盟してませんので、この効果を得ることはできず、上述の「優先権」を主張する効果が得られるのみです。
なお、PCT出願は日本語で出願できます。そのため、日本で出願してから少なくとも2年6月(30月)の間は、翻訳文は作成する必要はありません。
実務上は遅くてもその期限の1月前には翻訳を依頼します。
翻訳文提出等の所定の手続きを行わない国については、自動的にそれらの国の出願が取り下げたものと扱われます。
PCT出願費用
日本の出願人が日本の特許庁(国際出願課)へPCT出願をする場合を想定します。
国際出願手数料(国際出願の用紙の枚数が30枚まで):¥151,800
30枚を超える用紙1枚につき:¥1,700
送付手数料:¥10,000
調査手数料:¥70,000
優先権の書類の送付の請求に係る手数料 :¥1,400
合計で少なくとも ¥233,200 となります。
他にも色々とあり、また、料金の変更もあります。特許事務所に出願を依頼するには、特許事務所の手数料も必要です。
なおPCT出願手続きは、専門知識を要するレベルが高いため、弁理士へ依頼することをお薦めします。
「弁理士を利用するメリット」を参照願います。
PCT出願のその他のメリット
日本で出願してから1年の間にPCT出願をすれば、日本で出願してから少なくとも2年6月(30月)まで外国出願の猶予期間が認められることは、上述しました。その他のメリットを以下に示します。
- 国際調査機関が作成する見解書によって、出願の審査とほぼ同様の審査結果を、PCT出願から通常数ヶ月で得ることができます。これによって、外国出願の要否を検討できます。
- PCT出願を補正する手続によって、外国出願にその補正内容を反映できます。
- 日本を指定国(出願の可能性を残す国)に含めることによって、その出願審査請求期間を最大1年間延ばすことができます。また、その出願審査請求料は、通常の出願の場合(118,000円+請求項数×4,000円)よりも安く済みます(71,000円+請求項数×2,400円)。なお、日本を指定国に含めるためには、国内書面の提出手続きを要します(14,000円)。