出願審査請求について

特許は出願しただけでは審査をしてくれません。

特許出願から3年の間に「出願審査請求」という手続をすることで審査が開始されます。

何故このような制度にしているかといいますと、出願から時間が経てば、その発明の技術的価値を把握できる場合がある等の理由です。

また、他人の後願を拒絶するための、いわゆる防衛出願が目的で、自分は権利化を希望してない人もいることを考慮したと言われています。

その3年以内に何の手続きもしなければ、出願が取り下げられたものとみなされます。その出願は、それ以降原則として特許取得の途が断たれます。

出願審査請求料は、(118,000円+請求項数×4,000円)かかりますので、出費として大きいです。

そのため、特許出願から3年が近づくと、出願人は大きな決心(審査を請求するかどうか)をしなければなりません。

そのような決心は、なるべく先延ばしにしたいと考える人が多いようです。

平成13年9月30日までの出願は審査請求期間が「3年」ではなく「7年」でした。

できるだけ「7年」の扱いを受けたいという人が、その期限ギリギリに、ある特許事務所に殺到したそうです。

また「特許出願中」の状態をできるだけ長引かせたいと考える人もいます。

国内優先権制度について

出願審査請求期間を実質的に1年間延ばすためには、国内優先権制度を利用します。

国内優先権制度とは、出願から1年に限り改良発明等を加えるなど出願内容を充実させることができる制度です。

手続的には、願書で先の出願を特定した(後の)特許出願をします。

すると、先と後の出願内容の重複した部分については、先の出願の時にしたものとして新規性等の判断がされます。

ここで、先と後の出願内容の全てが重複した場合も、その重複部分については、先の出願の時にしたものとして新規性等の判断がされるのです。

そこで、先と後の出願内容の全てが重複するようにします(少なくとも先の出願の全てが後の出願に含まれるようにします)。すなわち、後の出願をすることで新規性等の判断の点で不利に扱われないようにします。

この後の出願の出願審査請求期間「3年」の起算点は、後の出願時です。

通常の出願審査請求期間「3年」に、国内優先権主張を伴う後の出願をするまでの「1年」を加えて、出願審査請求期間が「4年」となるのです。

このような国内優先権制度の利用形態は、立法者の予定していたものではないかもしれませんが、禁止されていません。(参考:中山信弘『特許法』(2008)弘文堂 P.199 同書では、特許権存続期間が1年間延長されてしまうことについて述べている)

費用について

国内優先権主張を伴う後の出願をするには、通常の出願をするための特許印紙代14,000円がかかります。

1年間の時間を「買う」のに14,000というわけです。審査請求費用を払うかどうかの判断のための費用としては安いかと思われます。

また「特許出願中」の状態をできるだけ長引かせたいための費用としても同様です。

(特許事務所を利用する場合は、その手数料が加わります)

弁理士を利用するメリット」を参照願います。