youtube等を利用するに当たり、利用者が不安を感じるであろうことをクイズ形式で説明してみます。

クイズ:以下の事例でA~Hさんのうち、違法者は誰でしょうか?

事例

(1)Aさんは、著作権を侵害する動画Xを、youtube(B)にアップロードしました。

(2)Cさんは、youtube(B)にアクセスしてして動画Xを視聴しました。

(3)Dさんは、youtube(B)にある動画XのリンクをSNSに貼って拡散しました。

(4)Eさんは、音楽のコンサートをスマートフォンで撮影し、youtube(B)にアップロードしました。

(5)Fさんは、野球場で野球の試合をスマートフォンで撮影し、youtube(B)にアップロードしました。

(6)Gさんは、テレビで野球の試合を録画し、youtube(B)にアップロードしました。

(7)Hさんは、テレビ放送をラーメン屋で客に見せました。

 

Aさん(アップロード主)について

Aさんは、違法者です。Aさんは、専門用語で言うと、送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害します。

Aさんの範囲は、手持ちのコンテンツをアップロードするだけなく、生放送の配信者も含みます。

たとえば、生放送のBGM等に著作権を侵害するものを用いたり、動画Xがテレビ放送等である場合を含みます。

 

Bさん(youtube)について

Bさん(youtubeの他,ニコニコ動画,ニコニコ生放送等を含む)は、通常承諾書に「違法動画のアップロードを禁止します」的な条項を含ませており、違法者にはなりません

仮に著作権を侵害する動画Xがアップロードされていても、責任は、アップロード主が負うように通常利用規約が作成されています。

ただし、Bさんは、動画Xの著作権者の要請により、通常動画Xを削除する義務を負います。

 

Cさん(動画視聴者)について

Cさんは、違法者にはなりません

これは、いくらCさんが動画Xを違法コンテンツだと知っていたとしてもです。

このような扱いにしたのは、動画Xが流通しない以上、私的行為として認めようという意図があったからと言われています。

ですから、動画Xが流通するようなおそれがある、いわゆるダウンロード行為までは適法行為として認めていません。

 

Dさん(SNS拡散者)について

Dさんは、違法者にはならないと考えられます

Dさんは、配信者ではなく、あくまでも配信者はBさんだからです。

この判断の基礎は、平成25年6月20日に大阪地方裁判所の判断です。

 

Eさん(コンサートアップロード主)について

Eさんは、違法者である可能性が高いと考えられます

Eさんは、音楽のコンサートで演奏している楽曲は、著作権が発生している可能性が高いです。それをアップロードするのは、著作権侵害になります。

仮に、その音楽の著作権が切れている場合でも、その演奏をアップロードするのは著作隣接権を侵害します。

音楽等を演奏した場合に、特定の演奏者の演奏だけ特別な扱いを受けることはよくあります。

そのように演奏等の実演は、著作物の創作ではないのですが、「創作に準じた」価値があると考え、著作隣接権として保護します。

 

Fさん(野球アップロード主)について

Fさんは、違法者にはならないと考えられます

そもそもスポーツは、著作物ではありません。

著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであることが要件になります(著2条1項)。

この要件のうち、スポーツは「創作的に」を欠くと言われてます(八百長の場合を除く)。

著作物でないものをyoutube(B)にアップロードしたとしても、著作権侵害になりません。

ただし、球場内に「撮影禁止」等の表示がある場合には、それを知って入場したFさんは、球場との約束を破ったことになり、損害賠償の対象になります。

また、スポーツの中には、フィギュアスケート等のように、「創作的に」の要件を満たすかどうか議論があるものもありますので、気をつけましょう。

 

Gさん(放送アップロード主)について

Gさんは、違法者です。

そもそもスポーツは著作物でないとしても、テレビ局が編集したスポーツ中継は、映画の著作物です。

著作物をyoutube(B)にアップロードする行為は、著作権侵害です。

 

Hさん(ラーメン屋)について

Hさんは、違法者にはならないと考えられます

原則として、著作権侵害になると思われます。

しかし、テレビ放送を見せることについて、一定要件を満たせば例外的に合法とされています(著38条3項)。

その一定要件を列挙します。

  • 放送または有線放送をそのまま流す(録画の再生はダメ)。
  • 客からテレビを見せることについて料金を受けない(営利目的でない場合)。
  • 通常の家庭用受信装置(テレビ)で伝達する。最近の家庭用テレビのサイズは、大きいので、この要件の解釈は現在どうなっているのかは不明です。

まとめ

原則として、アップロード主だけが違法者であると考えても良いと思います。