この記事を読む前提として、商標権の効力範囲には、その商標を使用する商品・役務(サービス)が深く関わってくることの理解が必要です。
単にマーク(商標)だけを調査しても何の意味もありません。
商標登録出願をする際にも、「指定商品又は役務」を指定します(参照「商標登録出願をするには」)。
類似群コードとは
似ている商品・役務(サービス)をグループ分けしたものです。
審査の際には、審査官は、同じ類似群コードの範囲で紛らわしいマーク(商標)があれば拒絶します。
類似群コードの調べ方
たとえば、「ハンバーガー」に関する類似群コードを調べてみます。
まず、特許庁HPのデータベース「J-Plat Pat」にアクセスします。
そして、以下のように、商標の項目から「6.商品・役務名検索」を選択します。
すると、以下の画面になります。商品・役務名に「ハンバーガー」を入力して検索ボタンを押します。
以下のように、53件程度ヒットしますので、一覧表示させます。
すると、以下のような検索結果一覧が表示されます。ここで、「区分」と「類似群コード」を注目してください。
「区分」が29に分類されるものは、「ハンバーガーのパテ」等であり、「ハンバーガー」そのものではないことがあわかります。「区分」が30に分類されるものは、色々と工夫していますが、「ハンバーガー」そのものを示しています。すなわち、「ハンバーガー」そのものを示す類似群コードは、「30A01」なのです。
また、あらゆる(殆どの)ハンバーガーショップは、ハンバーガーを商品として販売する他に、店内でレストランのようにハンバーガーを消費させます。これを、商標法では「役務(サービス)」として捉えます。その類似群コードも押さえておきましょう。
この検索結果一覧の後ろの方に、以下のように「ハンバーガーを主とする飲食物の提供」が区分43、類似群コード「42B01」があります。
類似群コードの範囲
検索画面に戻って、類似商品・役務審査基準をクリックします。
すると、以下の画面が表示されます。ここでは、敢えて最新データではなく、一つ古いデータを参照することにします(見やすいため)。
表示されたページを少しスクロールダウンすると、以下の画面になります。
「ハンバーガー」が区分30、「ハンバーガーを主とする飲食物の提供」が区分43に分類されるので、それぞれを参照します。
以上が類似群コード「30A01」と「42B01」の範囲です。すなわち、調査対象の商標の指定商品・役務の類似範囲です。
類似群コードを用いた商標の調査
文字商標の調査を例に説明します。まず、「J-Plat Pat」にアクセスし、商標の項目から「3.称呼検索」を選択します。
そして、類似群コードの欄に「30A01」と「42B01」をスペースで区切って入力します(OR検索)。そして、称呼(読み方)に「モス」と入力します(ここは、必ず大文字のカタカナで)。すると、54件のヒットがあります。
以上が、審査官が行っている商標の類否に関する審査実務の主なものです。
検索結果の内容を確認すると、それなりの結果が得られていることがわかります。
なお、指定役務「飲食物の提供」は昔、区分43でなく、区分42に属していました。
注意事項
- 称呼検索のテクニックとして、「モスバーガー」(登録商標)を検索語にするのは、避けました。これは、説明が難しいのですが、商標(マーク)の要部が「モス」だからです。すなわち、商品「ハンバーガー」の名前の一部に、「バーガー」をつけるのは、当たり前だからです。(たとえ「バーガーキング」(登録商標)等)。
- 「J-Plat Pat」のデータベースの特徴として、類似(紛らわしさ)に関するデータを主に収録しています。商標法では、他の商標に類似する以外に、商品・役務との関係で特徴的でないことも、拒絶されます(たとえば、商品「ハンバーガー」について商標「バーガー」等)。ですので、商品「ハンバーガー」について商標「バーガー」を検索して、ヒットしないからといって、出願すると拒絶されますので、ご注意ください。このような先例は、「J-Plat Pat」に収録されていません。近年は特に、審査官がインターネットを使って審査し、商品・役務との関係で特徴的でない範囲が広がっています(詳細な説明は省きます)。
- この説明だけで、商標調査を完全に習得できるとは、考えないでください。重要な案件については弁理士におまかせください。
- 「弁理士を利用するメリット」を参照願います。