著作権切れ(著作権フリー、またはパブリックドメイン(PD)とも言います)の著作物は、自由に利用できます。

実際にそのようなビジネスがあります。

そんなことはご存知だと思いますが、実際には注意事項がありますので、その注意事項等(全てではありません)を紹介します。

ここで、著作物の「利用」とは、ざっくり言いますと、商行為です。著作権が有効なら著作権侵害になる行為です。

その点、個人的な「使用」と区別しています。

著作権切れかどうかの判断

大雑把に日本について言いますと、映画以外の著作物の著作権は著作者の死後50年を経過したとき、映画の著作物の著作権は公表後70年を経過したときに、著作権が切れます。

なお、平成16年(2004年)1月1日施行の著作権法により、映画の著作物の著作権は公表後70年を経過したときに、著作権が切れることになったため(従前は50年)、それより前に切れた映画の著作権は復活しません。

たとえば、1953年に公表された『ローマの休日』や『シェーン』などは、2017年現在公表後70年を経過していませんが、2003年12月31日時点では公表後50年を経過していたので、日本では著作権切れとなります(最高裁判所第三小法廷判決平成19年12月18日)。

外国の著作物について日本の著作権法が、どう扱うかについて説明します。

日本の著作権法は、条約を優先します(著作権法5条)。

代表的な著作権に関する条約であるベルヌ条約では、以下の規定があります。

第7条〔保護期間〕
(8) いずれの場合にも、保護期間は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。ただし、その国の法令に別段の定めがない限り、保護期間は、著作物の本国において定められる保護期間を超えることはない。

つまり、日本は外国の著作物について、原則として日本の著作権法で定める保護期間を適用できます。

たとえばアメリカは、1978年1月1日以降に創作された著作物については、著作者の生存期間および死後70年までを保護期間の原則です。

ただし職務著作物等の場合、最初の発行年から95年間、または創作年から120年間のいずれか短い期間だけ存続します。

このようにアメリカは日本より長い保護期間となっていますが、日本国内のみで利用する限り、日本の保護期間となります。

また、日本より保護期間が短い国の著作物については、その短い保護期間を適用することにしています。(著作権法58条)

なお、第二次世界大戦中に主に敗戦国が、勝戦国等の著作権を保護しなかったとして、その分著作権の保護期間を延長するという「戦時加算」という制度があります。

詳しくはこちらを参照ください。概ね10~12年の延長がされています。

著作権切れの著作物の利用についての注意事項(1)

1つ目の注意事項は、他の権利(主に商標権)を侵害する態様では、いくら著作権切れの著作物といえども、利用できません。

たとえば、ディズニーのミッキーマウスは、日本国内のみで利用する限り、著作権が切れているものがあります。

ミッキーマウスの初の作品と言われる「Steamboat Willie(蒸気船ウィリー)」は米国1928年の作品であり、その著作権が日本で切れていることには疑いがないと思われます。

しかし「蒸気船ウィリー」のキャラクターを利用をしたい旨の相談を受けた場合、私は躊躇するでしょう。

商標データベースで社名「ディズニー?」で検索すると1133件ヒット。

その中に「ディズニー エンタープライゼズ インク」が所有している商標権(殆どが多区分)がまさにディズニーに関する商標を所有しています。

文字、様々な図形の商標権を所有しています。

「東京ディズニーランド」の文字商標の商標権も取得してます(第5757845号)。

この件数は今後増えることが考えられます。

商標権は、更新を繰り返すことで永久権になり得ます。

様々な絵柄の商標権を取得している相手に対して、無理に利用する危ない橋は渡らない方が良いと思われます。

ただし、商標的な使用態様でなく、商標を使用した場合には、ディズニー側はどういう対応をとるのか、興味があります。

詳しくは「商標とは何か」を参照ください。

たとえばTシャツの胸の部分に大きくミッキーマウスを表示した場合に、文句を言うのだろうか?(私は、文句言ってきて根気強く訴訟で粘られると予想します。)

著作権切れの著作物の利用についての注意事項(2)

2つ目の注意事項は、著作権切れの著作物に関する権利(実演家の権利(著作隣接権ともいいます)等)を侵害する態様では、いくら著作権切れの著作物といえども、利用できません。

たとえば、殆どのクラシック音楽は、著作権切れです。

しかし、その音楽を演奏したCD(プロのミュージシャンが演奏し、市販されている)を店舗で流す等することは、殆どの場合著作隣接権を侵害します。

著作隣接権の保護期間は、音源の発行(CD発売等)が行われたときから50年です。

音楽等を演奏した場合に、特定の演奏者の演奏だけ特別な扱いを受けることはよくあります。

そのように演奏等の実演は、著作物の創作ではないのですが、「創作に準じた」価値があると考え、著作隣接権として保護します。

著作権切れの著作物の利用についての注意事項(3)

3つ目の注意事項は、インターネット配信の場合です。

日本で著作権が切れていても、アメリカでは著作権が切れていない場合があります。注意しましょう。

これは、物流についても同様の注意が必要です。

日本国内のみ流通させる必要があるものについては、そのようなコントロールが必要です。

どうすれば合法的に著作権切れの著作物を利用できるか

以下に列挙します。

  • 映画の場合は、インターネット配信の場合を除き、著作権切れの映画を上演できます。通常の映画館での上映の他、バー等での上映が可能です。(なお余談ですが、ラーメン屋等で、テレビ放送を自家用のテレビ等で見せる行為は、合法とされています(法38条3項)。)
  • 著作権切れのクラシック音楽は、原曲に忠実に(誰かのアレンジを真似することなく)自分で演奏したものを事業に使うことは自由にできます。
  • 著作権切れの著作物のインターネット配信は、配信先を日本に限定することができれば、配信できると思います。(因みに日本の著名なインターネット配信サイトで、「著作権切れ」で検索すると、アメリカでは著作権が切れていないと思われる動画がヒットします。アメリカからのアクセスをブロックしてるのか心配です。)
  • ネットには著作権を放棄した(一種の著作権切れ)音楽や動画が提供されています。素人のものですが、それらの中で気に入ったものを利用するのもいいでしょう。

個別の事案は弁理士に相談しましょう。