特許明細書等の特許書類が読みにくいと感じる人は多いと思います。

「特許書類はそういうもの」と思っている人もいるのではないでしょうか?

この読みにくさには、4つの理由があります。

以下にその理由を説明します。

 

1.正確さを求めるため

たとえば地球の形状を表現するのに、「地球は丸い」は、非常にわかりやすい表現です。

しかし、この表現は正確ではありません。

まず、「丸い」の表現は、3次元の「球形」を表現するばかりでなく、2次元の「円形」をも表現します。

常識から考えて「地球」の形状を表現を解釈するのに、2次元の「円形」は除外するべきだ、という意見もあるでしょう。

しかし、弁理士の仕事として「地球は球形である」の、正確に近い表現を選ぶべきです。

次に現在地球は、1/298.25だけ、へしゃげていると言われています。

すなわち、赤道では直径6378kmで、極を通る経度での直径は6357kmと、21km以上の違いがあります。

この正確さを表現しようとすると、「地球は球形に近く・・」と、どんどん読みにくくなってきます。

さらに、地球表面の凹凸を表現しようとすると、より読みにくくなります。

基本発明のように、類似技術のない段階では「地球は丸い」のような表現が可能となる場合もあります。

しかし、技術競争が厳しくなり、他社技術との差別化を表現するには、発明のポイントを製品の細部に求めます。

その結果、特許書類が読みにくくならざるを得なくなるのです。

 

2.その業界独特の表現があるため

みなさんは「興趣の高揚」(こうしゅのこうよう)と言われて、ピンと来るでしょうか?

パチンコやスロットマシン等で遊び、興奮してドキドキした気分になることを、「興趣が高揚する」等と表現することがあります。

どんな業界で長年使われている用語があるので、それを使うのはしょうがないかもしれません。

 

3.読みにくくても機能するため

以前、ビジネス誌に特許に関する記事を連載したことがあります。プロフィールを参照ください。

ビジネス誌に記事を書くと、それが読みにくいため、自分ではしっかり書けていると思っていても、”的を射ていない”と指摘を受けることがあります。

そのようなときは「そこに書いてあるでしょう」と反論したくなります。

しかし、ビジネス誌では、そんな反論をする機会はありません。

特許に興味が薄い人にも読んで欲しいと思っても、読者は読みにくい記事は読もうとしないのです。

その結果、ビジネス誌では書き手が読みやすさに気を遣うことになります。

ところが、特許書類は、後から「そこに書いてあるでしょう」の反論が通用する文書です。

すなわち特許書類は、読みやすさよりも「必要十分なことが書いてあるか」が優先される文書なのです。

だから特許書類は、読みにくいものが多いのです。

 

4.威厳を求めるため

今はあまりこの理由で読みにくくなることはないと思います。

特許書類にありがたみを持たせるには、威厳のある難しい(読みにくい)文章を書いた方が良い、という感覚が昔はあったようです。

1件数十万円を取って、特許書類を作成するには、そのような威厳が必要だったようです。

 

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弁理士としては、1は仕方がないとしても、2,3については改善の余地はあると思っています(4は論外)。

中小企業等、特許の専門部署が無い企業とお付き合いする際には、特に気をつけたいものです。