特許出願をするには、まず発明を的確に捉える必要があります。
そして、特許出願書類を作成する必要があります。
ここで「的確に」とは、正確にというばかりではなく、従来技術に比べてどの点が優れているかの評価が加わります。
特許は従来技術に対して突出した部分に与えられるからです。
特許請求の範囲の記載
そして、この発明を正確な言葉で無駄な逃げ道を作らず表現する必要があります。
これを特許出願書類の「特許請求の範囲」という記載項目に記載します。この作業が最も大変です。
せっかく特許を取得しても、簡単に回避できる権利では元も子もありません。
実例を示します。ここでは特許第2804933号「オートカフェ」の権利範囲について説明します。
この特許を選択した理由は、特定の技術についての深い知識を要さない等、理解しやすく、説明もし易いためです。
ここで筆者はこの特許権者に対して、何らネガティブな感情を抱いてません。
以下の記載は、この特許権者を非難する意図によるものでないことは当然で、単に特許権の効力範囲についての一つの解釈を述べているに過ぎないことをご理解ください。
特許の権利範囲は、原則として「特許請求の範囲」の記載に基づいて決められます。
以下に示す記載が本特許の特許請求の範囲の記載です。
項目A~Fの各々について、その理解を容易にする「内容」と、各項目を満たさないようにする「逃げ道」を下表にまとめてみました。
この表に示す「逃げ道」が無いかまたは現実的でなくするように記載するのが理想的です。
逆に「現実的で容易に採用できる」逃げ道が一つでもであれば特許の価値がぐんと下がります。
たとえば、上記の表のBとC「自動食器貸し機に硬貨を投入し」は、筆者の考えとしては不要な記載であり、削除しても十分に発明を表現できていると思います。
この記載をしたために逃げ道をわざわざ作ることとなっています。
このように、発明を正確な言葉で無駄な逃げ道を作らず表現することは、普通の言語の使用方法とは異なる(難しい)ことがわかると思います。
この例の発明は、登場人物(発明を構成する部品等)が少ないから、まだ良いですが、カメラのズームレンズやパソコンのプリンタ等の複雑なメカの発明の場合には、より難しくなることが容易に予想できるでしょう。
明細書等の記載
そして、特許請求の範囲以外の項目で、出願書類の明細書には、発明の骨子はもちろんのこと、発明が実現する様子(動作を伴う発明の場合にはその動作)を記載する必要があります。必要に応じて図面を作成します。
また明細書には、発明のバリエーションを記載する必要があります。
これは拒絶理由対策です。
審査の結果、拒絶理由通知(約95%程度の確率で発せられます。)が来た場合には、補正(特許請求の範囲の記載を修正する)をして、拒絶理由を回避するのが通常です。
この補正は、出願当初の書類に記載した範囲でしか、許されません。どんな拒絶理由が来るか予想できない段階でその拒絶理由を回避する発明のバリエーションを記載するのです。
まとめ
以上の作業をして特許出願書類を作成し、特許庁に提出すれば、特許出願ができます。
「弁理士を利用するメリット」を参照願います。