特許データベースを使って特許調査をする際に、頭に浮かんだキーワードで検索するだけですと、検索モレを生じやすくなります。

そこで、検索モレを生じにくい特許分類を利用した特許調査方法を紹介します。

特許分類の表示

特許分類とは、データベースでの検索の便宜のため特許公報毎に付与された技術分類です。

特許庁の職員が、特許公報1件1件を読み、各公報に特許分類を付与します。

まず、目的とする技術(特許)を探すために、検索モレがあってもいいので、適当なキーワード検索をして、ヒットした類似技術(特許)の公報を見てみましょう。

上の図は、特許公報の最初のページの上部を示す図です。赤く囲んだ領域に特許分類の一つである「国際特許分類(IPC)」と、それをさらに細分化した「FI(ファイルインデックス)」という別の特許分類が表示されています。

 

ヒットした公報の技術内容

因みに上記公報の技術内容は、以下の通りです。

(57)【要約】        (修正有)
【課題】  蕎麦中のルチン(ビタミンP)の含量を増加させる方法と不溶性のルチン(ビタミンP)を含む蕎麦抽出液を用いて水溶性の飲み物にする。
【解決手段】  蕎麦中に小量含まれる有効成分の含量を高める方法やその利用法に関する課題を取り上げ研究を重ねた結果、蕎麦を約0℃から25℃以内の温度条件下で冷水を与えながら約7日間発芽させることによりルチン(bタミンP)の含量を50倍以上増加させることに成功し、水溶性の飲み物を製造するために異なる有機溶媒(エチルアルコル)の濃度を用いる。

 

なぜこの特許公報にこの特許分類が付与されたか

上記の公報に付与された国際特許分類であるA23L2/38の意味を調べてみましょう。

国際特許分類の意味を調べるには、特許庁の特許データベースJPLAT-PATのパテントマップガイダンスを使用します。

たとえば「FI照会」のボックスに、国際特許分類の頭から4文字「A23L」を入力し、その横の「照会」ボタンを押します。

すると、「A23L」より下位の「メイングループ」と言われる部分が表示されます。

国際特許分類A23L2/38の「メイングループ」は「2/00 非アルコール性飲料」であることが確認できます。

さらに「2/00」をクリックします。

国際特許分類A23L2/38の意味は「他の非アルコール性飲料またはその粉末」であることがわかります。

他の」とは、「2/00 非アルコール性飲料」のうち、「2/02 ・果実または野菜ジュースを含有するもの」とされ、「2/36」までは、「2/02 ・果実または野菜ジュースを含有するもの」の下位の分類(製造方法など)の分類が続くことから「果実または野菜ジュースを含有するもの以外の他の」の意味です。

なお、メイングループ以下の複数の分類の上位・下位の関係を示すのが「・(ドット)」の数です。

「・」の数が「・・」「・・・」と多くなればなるほど、下位になります。

ここで、国際特許分類A23L2/38には、さらにA,B・・と記号が付いているのがわかります。

これがFIの記号です。

上記公報のFIには、「J」の記号が付いていました。

この意味は「他の非アルコール性飲料またはその粉末」のうち「穀類・ハト麦」に関する技術であることを意味しています。

上記公報の技術内容は、蕎麦中のルチン抽出液の飲料に関する技術なので、「他の非アルコール性飲料またはその粉末」のうち「穀類(蕎麦粉)」に関する技術だと考えて、このような分類を付与したものと考えられます。

 

適切な特許分類の選択・分類を用いた検索

適当なキーワード検索した結果、上記のメイングループ等までたどり着きました。

そのページ周辺をサーフィンして、適切な特許分類を選択しまししょう。

その特許分類を使って「テキスト検索」または「分類検索」で検索します。

以下の図は、テキスト検索です。

 

特許分類の国際化

さて日本国は、国際特許分類に関するストラスブール協定に加盟しているため、国際特許分類を各公報に付与することが義務付けられています。

ストラスブール協定には、主要国56ヶ国が加盟しているため、この分類を知っていれば世界中の特許を検索することが可能です。

ただし、FIについては、日本の特許庁独自のもので、特に日本国内で出願が多い技術(たとえば上記蕎麦の飲料等)について、付与されています。

 

何故キーワード検索が検索漏れを生じやすいのか

それは、特定の技術用語の表記方法が特許では自由だからです。

たとえば「メッキ」の技術を考えてみましょう。

「メッキ」の同音同義語だけでも「めっき」「鍍金」があります。

人によっては「電着」や「プレーティング」などで表現する場合が考えられます。

「メッキ」の技術をデータベースで、キーワード検索をすれば検索語の選択を誤ることで、検索モレをすることが考えられます。

また、たまたま「メッキ」に関する語が含まれていたからといって、殆ど技術的には「メッキ」と無関係なものも含まれてしまう(検索ノイズ)問題もあります。

やはり、せっかく特許庁の職員が、特許公報1件1件を読み、各公報に特許分類を付与しているのですから、それを活用しましょう。

 

特許分類を利用できるデータベース

日本の特許を扱い、無料のものといえば、私が知ってる範囲では、許庁の特許データベースJPLAT-PATの「特許・実用新案分類検索」と「特許・実用新案テキスト検索」があります。

前者は、古い公報(平成5年より前に発行された公報など)についても精度よく検索できる印象があります。

後者は、特許分類とキーワードの論理積(掛け算)の検索ができる点で前者より優位性がありますが、精度が前者よりも劣る印象があります。

データベースには、入力方法等の点でクセがあります。そのクセは、長く使わないとわからないものです。

日本の特許を扱うという意味では「espacenet」や「wipo patent scope」もありますが、敷居が高いと思います。

特許分類を利用した特許調査の注意事項

列挙します。

  • 国際特許分類とFIの他に「Fターム」という日本国でのみ有効な特許分類があります。興味がある方は試してみてください。
  • 調査対象の技術によっては、特許分類の利用がふさわしくなく、キーワード検索の方が良い調査結果となる場合があります。アチコチに分類がバラけてしまい、分類で調査することにより検索ノイズが膨大となる場合などです。特許分類は万能ではないこともご承知おきください。所詮人間がつくったものですので。
  • 特許分類同士の論理積(掛け算)は、できるだけしないほうが良いと思います。必ずしも複数の特許分類が付与されている保証がないからです。
  • 調査業務は文章で表現しにくい「勘」や「慣れ」が重要になります。重要な案件は調査のプロである弁理士に依頼しましょう。

時間がありましたら、こちらのページもご参照ください。

弁理士を利用するメリット